若手のための研究補助ツール紹介
論文管理ツール
研究をする上で論文を読むことは非常に重要です。arXivには毎日多くの論文が投稿されていますが(約50本/日)、これらのうちから自分の研究に関わるもの、興味があるものを選んでチェックしなければなりません。また、論文は一度読んで終わりではなく、研究中に気になることができた時、論文を書くときなど繰り返し読む必要があります。
したがって、論文を保存するときには後々検索しやすい形式で保存しなければなりません。ですが、多くの論文について手動でファイル名変更、フォルダ分けをするのは面倒です。
まとめると、
-
研究において論文を読むことは非常に重要
-
arXivには毎日多くの論文が投稿されている (~50本/日)
-
必要な論文を後々検索しやすい形式で保存する必要がある
-
手動でファイル名変更、フォルダ分けなどするのは面倒
そこで役に立つのが論文管理ツールです。ここでは論文管理ツールで何ができるのか、それぞれのツールの特徴などを紹介して行きたいと思います。
論文管理ツールの機能
論文管理ツールの機能は主に以下の3つです。
-
ダウンロードしたpdfファイルから自動でタイトル、著者名、アブストなどの情報を読み込んでくれる
-
読み込んだ情報をもとに自動で元のpdfファイルの名前を変更してくれる
-
アブストに含まれるキーワードなどで自動でリストに振り分けることができる
これを活用することで論文の整理にかかる時間が大幅に短縮されます。また、論文の参考文献でよく使うbib情報も管理することができ、自分で作ったリストから.bibファイルを出力することもできます。
論文の管理に困っている皆さんはぜひ利用して見てください!
それぞれのツールの比較
Mendeley
MendeleyはElsevier社の論文管理ツールです。Mac, Windows, Linuxに対応しており、OSを選ばず使用することができます。また、アプリ版もありPC以外でも使用できることも強みの一つです。Web版とデスクトップ版があり、オンラインでもオフラインでも使うことができます。
以下に簡単にMendeleyの長所をまとめておきます。
-
2GBまで無料
-
wordやoverleafと連携して簡単にreferenceを作ることができる
-
初心者にも使いやすい
特に学生にとっては無料で使用できるというのは大きいと思います。もちろんこれ以外にも文献情報の読み込みやファイル名の自動変更などの基本的な機能は含まれており、どれにするのか迷っているならとりあえず試してみて損はないと思います。
ただし、以下の2点には少し注意が必要です。
-
Macの新OSへの対応が非常に遅い
-
論文数が増えると内部のビューワーが重くなる
特にMacの新OSについては半年くらい対応しないこともあるので気をつけてください。うっかり新OSにアップデートしてしまうとデスクトップ版が開けなくなります(Web版は正常に動作するようです)。
他にも日本語の文献にはうまく対応していないという点もありますが、天文業界ではそこまで大きな問題にはならないと思います。
Readcube/Papers
Readcube, Papersはもともと別々の論文管理ツールですが、どうやら最近Readcube側に統合されたようです。ブラウザ版はどのOSでも使えますが、デスクトップ版はWindows/Macのみとなっています。iOSアプリもあるのでiPadやiPhoneで論文を見るときにも使えます。
以下に簡単にReadcube/Papersの長所をまとめておきます。
-
UIが見やすく使いやすい
-
Tagなどでファイルをリストに分類しやすい
とにかくUIが見やすいので直感的に操作できます。操作方法などを一々調べる必要がないのでそういうのが面倒な人には非常にオススメです。また、SmartCiteなどを使うことでwordに簡単にbibliographyを入れることができます。
ただし、他のソフトに比べると以下のような欠点があります。
-
文献情報の読み取り機能が弱い
-
内部のビューワーが重い
文献情報についてはいくつか読み取り方法の選択肢がありますが、どれを選んでも読み取り機能に不安が残ります。特に10年以上前で論文のフォーマットが違ったりするとほぼ読み取ってくれません。google scholar経由で読み取ることもできるので、こちらが改善されれば自然にReadcubeの方もよくなると思います。また、内部のビューワーは重いので右クリックなどから自分のデフォルトのpdfビューワーを選んだ方が良いでしょう。
ZoteroはCorporation for Digital Scholorshipのソフトで、デスクトップ版はWindows/Mac/Linuxに対応しています。ブラウザ版もあるので基本的にはどのOSでも使えます。特徴として文献情報の読み取り精度が高く、元からbibtexで管理していた人にとっては扱いやすいと思います。
以下に簡単にZoteroの長所をまとめておきます。
-
文献情報の読み取り精度が高い
-
ブラウザにプラグインを入れておけば論文の保存、名前変更などを勝手にやってくれる
-
内部のビューワーがなく、デフォルトに設定しているPDFビューワーで見ることができる
基本的にbib情報を元に管理しているのでbibtexやBibDeskなどを使っていれば簡単に移行することができます。また、手動で新しい論文を追加するのも簡単で、arXiv ID, ISBN, DOIなどを入力すれば文献情報とPDFをダウンロードしてくれます。
ただし、他のソフトに比べると以下のような欠点があります。
-
UIが見づらい
-
デフォルトだと使いにくいのでカスタマイズが必要
他にも欠点とまでは行きませんが、無料版だと300MBまでしか保存できないという点があります。それ以上必要な場合は$20/yr (2GBまで), $60/yr (6GBまで), $120/yr (unlimited)のうちから選択する必要があります。また、ブラウザに入れるプラグインもたまに動かなくなることがあるので(多分ファイアーウォールとかの設定のせい?)、その場合は削除して再インストールする必要があります。